大河ドラマ「義経」~義経と奥州平泉

源義経に関して顛末をよく知らずに視聴した。伝説のような、有名な逸話のようなそんなシーンがふんだんに映像化されていて面白かった。 特に印象に残ったのが、奥州平泉と藤原秀衡氏の存在で、そこは、朝廷とのしがらみや、勢力争いなどから離れた平和で豊かな憧れの小国に思えた。

源氏のリーダー的存在だった源義朝義経の実父。「平治の乱」で、平清盛に敗れ、この世を去る。成り行き上そうなったが、二人はかつて親友だったとか! 清盛は義朝の子らの命を奪うことはしなかった。 赤ん坊だった義経をはじめ兄弟たちを殺さなかった。そして別の場面でもやはり頼朝を生かした。

義経は幼い頃、牛若(うしわか)と呼ばれ、なんと清盛に可愛がられて育つ!実の子と同様に時にはそれ以上の愛情を受け、義経は物心がつくまで清盛を本当の父親だと思っていたそうだ。清盛の子らとも交流し、一緒に遊ぶ光景も描かれている。しかし、それも幼少までの話。成長とともに事情が変わり、義経は居場所を失う。
15歳の頃、意を決し、源氏とゆかりのある奥州平泉へ保護を求めて旅に出る。 (これより120年程前、直接の先祖にあたる源頼義が、「陸奥守」としてこの地の混乱を治め、更に、その息子源義家が奥州藤原氏の始まりに深く関係しているという)

広大で豊かな奥州は独立国さながら栄華を誇っていた。 その奥州を治める藤原秀衡は「北の王者」というにふさわしい人物。 義経を受け入れ、信頼し、愛情をそそぐ、父親のような存在として描かれている。

「わしがこの領地を越えて攻め入れば、必ずや戦。
だが、わしにそのつもりはない。
われらから戦を仕掛けることはない。」
「われらから戦を仕掛けることはない。
しかし我らの生き方を踏みにじるなら、
命を懸けて抗う覚悟がござる。」
(第10話「父の面影」より)

義経の気立ての良さを気に入った秀衡は、義経を前にこう語る。「この後、九郎(義経)殿を我が藤原家の子と思う。これよりそれがし、都より九郎殿をさしだせと言うて参っても、我が子を差し出すつもりは毛頭ない。」と。そして、義経は秀衡の下で武士(もののふ)の道を学び、成長していく。

時に秀衡は義経に、この地にとどまり、共に生きていく道を強く説き勧める。それはこの上なく魅力的に思えた。この素晴らしい奥州で、強い父親の庇護の下、家族を持ち平和に暮らす。その道を選んで欲しかった。この後、何度もそう思ったものだ。あの時、奥州から出ず、平穏な道を選んでいたらと・・。
 しかしこの時義経の心の中には源氏の嫡流として生きるという強い願望があった。鎌倉の兄と再会し、共に平家を討ちたいと。 それはかつて赤ん坊だった義経の命を助けた平清盛と敵対するということ。そして幼少期を一緒に過ごした兄弟たちを討つということ。
そればかりではない、奥州にとっても、今保っている平家と源氏、朝廷とのバランスが崩れることはありがたくない。しかし、義経は引き止める秀衡を振り切り、鎌倉へと向かうのだった。

 その後、鎌倉の頼朝と合流した義経は華々しく活躍する。 奇襲をはじめとする義経の型破りな攻撃はことごとく成功し、彼は平家滅亡の功績を挙げることとなる。一躍時の人となった義経だが、これより先は徐々に歯車が狂いだす。 兄頼朝から忠誠心を疑われ不仲となっていくのだ。最終的に頼朝は、義経に対し討伐命を下す。

 義経には愛する女性がいた。静御前というその女性は、義経と一緒に逃亡するが、途中、生き延びるため別々に逃れる。彼女は頼朝軍に捉えられ、鎌倉に送られてしまう。身重だった彼女は鎌倉で義経の子を出産するが、産声を上げたのは男子であった。 かつて平清盛は、討った相手の子である義経も頼朝も殺さずに救った。そうして生き延びることができた頼朝だったが、義経の長男を生かすことはしなかった。 出産後、静御前が目覚めると横にいるはずの赤ん坊の姿はなく、彼女はその意味を瞬時に悟る。魂を抜き取られたような静御前の姿は哀れで最も辛い場面だ。

 さて、鎌倉軍の監視網をくぐり抜け、命からがら奥州にたどり着いた義経たちを、藤原秀衡は温かく迎え入れる。約7年ぶりの再会だ。 その間、平家が滅んだことにより、源氏の力は強大になり、頼朝の存在はこの奥州にとっても脅威となっていた。秀衡は唐突な要求を示す頼朝に対し、威厳ある態度で臨む。あえて逆らわず、悠然と構えることで、相手を威圧することに成功する。

 義経らは、ようやく平穏な日々を得られるかのように思えたが、その同じ年、秀衡は病気により急逝する。奥州藤原氏の黄金期が突如として終焉を迎える。 秀衡の後を継いだ泰衡には、秀衡のような才覚はなく、頼朝の思惑通りに動かされてしまう。今まで保ってきた平和がこうも安々と崩れ去るものかとあっけにとられるほど。突然のごとく、希望のない結末を迎える。義経は奥州においてその戦の才能を発揮することなく、自害へと追い込まれる。同情ばかりが強く印象に残る哀しい最後となる。

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